もう30年以上も多摩川の近くに住んでいて日頃から慣れ親しんでいる散歩コースなのに、このような植物に初めて出会った。あちこち見ているようで、殆ど見てない、目は節穴だったのだ。この植物が目に入った時、多摩川土手はいろんな野草が一斉に伸び始め、それぞれが花を咲かせ始めていた。そんな中、もう花を咲かせ終わり早々と茶色になって枯れてしまったように見えたのだ。しかし、それ自体が大きな間違いだった。私が見たそのものが花だったのだ。もちろん下のほうから順番に咲いていっているようだが、まだまだこれからが花の時期のようだ。まず一株が目に入ったが、よく見ると10m以内にあちこち群落をつくっている。珍しくて、早速写真を撮ろうとしたが、周りにあるイネ科の野草やツメクサなどがうるさくて、その植物だけの写真がなかなか撮りにくかった。もちろん名前は分らなかった。

最初は、ツチアケビかとも思ったが、どうにても蘭のようには見えないのでやはり違う。後で調べて分かったのだが、この植物は「ヤセウツボ」と言う名前らしい、その黄花タイプのようだ。そして、この植物とツメクサが混在していた理由も分かった。この植物は自身では葉緑素を持たずツメクサに寄生しているからだ。ヨーロッパ・アフリカ原産の外来植物とのことだが、いつ日本に入ったのだろうか。考えるに、明治時代ヨーロッパからの荷物に詰め物として使われていたツメクサと一緒に人知れず入って来ていたのではあるまいか。そして、多摩川でも近年いろんな外来種を見るようになったが、この多摩川にはいつ頃から生えだしたのだろう。

ともかく、腐生植物とは奇妙な植物だ。私が知るだけでも、ギンリョウソウ・タシロラン・ツチアケビ・ナンバンギセルなど、どれも極めてユニークで何とはなしに気になってしまう植物たちだ。

(Henk)