「クズ」、ここで言うクズは植物のクズ(葛)で、ゴミクズ(ごみ屑)ではありません。

私は一年中多摩川の土手から河川敷を散歩したり、虫を追いかけたりしていますが、夏場は特に河川敷には一面にクズが蔓を伸ばし大きな葉を広げて人が立入ることを拒んでいるかのようです。そこを葉をかき分けながら進もうとしても、油断すると地面に縦横に張り巡らされた強靭な蔓に足を取られてスッテンコロリ。その蔓はただ地面を這うだけではなく、這っていた先で根を下ろし、その先にあるどんなものにもすぐ絡みつきます。大きな木でもあれば易々と天辺まで這い上ります。ともかく生命力・繁殖力が強い。こうしてみると、一見嫌われ者のようですが、そんなクズの葉を主食とする虫もいます。マルカメムシに代表されるカメムシ類です。さらに最近の外来種ではムネアカオオクロテントウというテントウムシ、さらにクズクビボソハムシというハムシです。しかし、彼らがいくら食べたとてクズの繁殖力が勝ります。そんなクズですが、他の面では随分お世話にもなっているのです。根から採れる良質のデンプンは吉野葛に代表されるような菓子の原料や食材にもなるし、葛根湯のような漢方薬の原料ともなってます。

先日、そんなクズが花を咲かせ始めていました。赤紫のマメのような花を下から上へ房状につけています。この花が咲き出すとあたり一帯に強い特有の香りが広がり、花を見なくても咲いていることが分かるほどです。またこの花が咲き出すとそれを(幼虫が)食べるウラギンシジミやウラナミシジミというチョウが見られます。

クズの花

ノカンゾウに絡みついたクズ

クズの葉を食べるクズホソクビハムシ

ムネアカオオクロテントウ

ウラギンシジミ(オス)

(Henk)